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インスピロンによる安全な酸素療法
Webセミナー「酸素療法セミナー(ダイジェスト版)」
インスピロンFAQ
インスピロンによる酸素療法
看護基準 (ダイジェスト版)
監修 北海道大学医学部保健学科
教授 宮本 顕二先生
酸素療法のためのディスポ製品として、永年ご愛顧を頂き、厚く御礼を申し上げます。
より安全にご使用頂ければと、宮本先生のご指導を頂戴し「看護基準」を作成いたしました。
臨床現場でのガイドラインの一つとして、ご活用頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
小林製薬株式会社 小林メディカルカンパニー

 

なお本ページは、一般公開用のために個別製品の説明については省略しております。医療関係者の方はホームページTOPよりログインの上で、クローズサイト内の「看護基準(全体版)」をご覧いただけます。
 
目次
1. 酸素療法とその目的
2. 用語の定義
3. 呼吸不全の分類
4. 酸素吸入の開始時期
5. 初回投与酸素濃度と目標とするPaO₂
6. 低酸素血症がおこる機序
7. 禁忌
8. 必要物品
9. 注意事項
10. 基本手技
11. 酸素療法の実際(個別製品説明のため省略)
12. 使用上の注意(個別製品説明のため省略)
13. 合併症
14. 参考図書
 
本基準は、弊社製品である「インスピロン」をご使用いただくことを前提として作成されております。酸素療法実施の際は、実施前に必ず各器具の添付文書をよく読み、その注意事項をお守りいただきますよう、お願い申し上げます。

 

1. 酸素療法とその目的
酸素療法とは空気より濃度の高い酸素を吸入することにより、下記の効果を期待するものです。
1) 低下した動脈血酸素分圧(PaO₂)を上昇させ、低酸素状態に陥った組織への酸素供給を改善させる。
2)

低酸素血症により引き起こされた換気亢進や心拍数増加を抑制することにより呼吸仕事量や心仕事量を軽減させる。また、低酸素による肺血管攣縮を解除することにより上昇した肺動脈圧を低下させて右心負荷を軽減させる。

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2. 用語の定義
呼吸不全

動脈血ガスが異常な値を示し、それが為に生体が正常な機能を営み得ない状態で、室内気吸入時のPaO₂が60 Torr以下になる呼吸器系の機能障害、またはそれに相当する異常状態(厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班昭和56年度報告書)。

急性呼吸不全
急性の経過で呼吸不全に陥った状態。
慢性呼吸不全

呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月以上持続するもの。

ここで、PaO₂が60 Torr以下のみを呼吸不全と定義するのではなく、それに相当する異常状態も含めている。つまり、呼吸器障害が存在し、室内気吸入下の動脈血ガスが測定できなくとも中心性チアノーゼが認められるときや、経皮動脈血酸素飽和度(SpO₂)の値から明らかに低酸素血症が存在する場合、呼吸不全と診断して差し支えない。
準呼吸不全
PaO₂が60 Torr以上、70 Torr以下を準呼吸不全として扱う。

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3. 呼吸不全の分類
呼吸不全をPaO₂の値から以下の2つに分類される。
T型呼吸不全 … PaO₂≦60 Torr かつ PaCO₂≦45 Torr
U型呼吸不全 … PaO₂≦60 Torr かつ PaCO₂>45 Torr

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4. 酸素吸入の開始時期
1) PaO₂が60 Torr以下、あるいはSpO₂が90%以下、あるいは中心性チアノーゼを認める場合
2) 低酸素血症が予想される場合
(但し、治療開始後にPaO₂を確認すること)
3) 低酸素血症の有無にかかわらず以下の場合
(1)重症外傷
(2)急性心筋梗塞
(3)麻酔後、外科手術中(短期間の投与)
4) その他、酸素投与が必要と判断した場合

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5. 初回投与酸素濃度と目標とするPaO₂

1)

初回投与酸素濃度
室内気吸入下のPaO₂に対応した初回投与酸素濃度(FIO₂)と鼻カニューラ使用時の酸素流量を表1に示す。
表1 PaO₂>60 Torrに到達するために推奨される初回の酸素流量設定
室内気吸入PaO₂(Torr) FIO₂(%) 鼻カニューラ使用時の酸素流量(L/分)
50 24 1
45 28 2
40 32 3
35 36 4
泉 孝英 監修・監訳 西村浩一ほか、米国胸部学会COPDガイドラインCOPDの診断・管理基準。1996年、ライフサイエンス出版より引用。宮本一部改変。
酸素投与を開始して安定した状態になるまで20〜30分かかることは銘記すべきである。
約30分後に動脈血ガス分析を行い、吸入酸素濃度を調節する。
 

初回酸素投与後の動脈血ガス分析に基づく処置(鼻カニューラ使用時)を表2に示す。

表2 動脈血ガス所見に基づく酸素投与量の調節
PaO₂(Torr) PaCO₂ pH 治療方針
>60 正常 正常 酸素流量変更なし
>60 やや高い 正常 酸素流量変更なし:動脈血ガス分析モニター
>60 高い 正常 酸素流量変更なし:動脈血ガス分析モニター
>60 非常に高い 低い 機械換気を考慮
<60 高くない 正常 酸素流量を上げる:動脈血ガス分析モニター
<60 やや高い 正常 酸素流量を上げる:動脈血ガス分析モニター
<60 非常に高い 低い 機械換気を考慮

* PaO₂が60 Torrより非常に高ければ、60 Torrに近い値を維持するように酸素流量を減らす。

* PaCO₂が上昇している患者に対しては、はじめからベンチュリマスクを使用すべきである。
泉 孝英 監修・監訳 西村浩一ほか、米国胸部学会COPDガイドラインCOPDの診断・管理基準。1996年、ライフサイエンス出版より引用。宮本一部改変。

2)

目標とするPaO₂

慢性呼吸不全ではPaO₂が60〜65 Torr程度になるように吸入酸素濃度を調節する。これは酸素解離曲線からこれ以上にPaO₂を上げても、酸素含量の増加はわずかであるためである。但し、急性呼吸不全や重症外傷、高度の貧血、急性心筋梗塞、麻酔後、外科手術中などではPaO₂は80 Torr以上にすることが多い。

*

PaCO₂の蓄積を伴う場合、高濃度酸素吸入は急激なPaCO₂の上昇を起こし、意識障害(CO₂ナルコーシス)を引き起こす。これは脳脊髄液のpHが急激に低下したために起こる。ただし、慢性のPaCO₂上昇は腎臓の代償作用によりpHが保たれているため、CO₂ナルコーシスは起こらない。

*

生命維持には低酸素血症の改善が必要であり、CO₂ナルコーシスを恐れるあまり、酸素投与をためらってはいけない。

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6. 低酸素血症がおこる機序
下記の4つの機序で低酸素血症が引き起こされる。
1) 換気不全(肺胞低換気)
2)

換気血流比不均等(VA/Qミスマッチ)

3) 拡散障害
4) 右→左シャント

ここで、低酸素血症が1)の機序で起こっている場合、PaCO₂は上昇する。

2)〜4)の機序で起こっている場合、PaCO₂は上昇せずAaDO₂が開大する。
尚、VA/Q ミスマッチでもPaCO₂は上昇するが、臨床的にはPaCO₂の上昇=換気不全と理解して構わない。
呼吸器疾患の多くは、これら4つの機序が混在している。

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7. 禁忌

パラコート中毒
パラコートと酸素が反応して生成される活性酸素により、肺障害を起こすことがある。
しかし、PaO₂が40 Torr以下になれば、救命のために最小限の酸素を与える。

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8. 必要物品
酸素ボンベ(中央配管の場合は不要)、酸素流量計、オキシジェンカニューラ、オキシジェンマスク、酸素テント、蒸留水

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9. 注意事項
1) 火気厳禁
酸素は燃焼を促進する働きがあるが、それ自体は燃えない。
2) 接続部からの酸素漏れ
3) 副作用
(1) CO₂ナルコーシス

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺結核後遺症に伴う低酸素血症の場合、動脈血中のCO₂が常に蓄積しており、呼吸中枢は頚動脈小体への低酸素刺激で働いている。そのため、高濃度酸素を吸入させると、一時的に低酸素血症が改善されて呼吸中枢が働かなくなり、呼吸が抑制される。

対応:低濃度(1〜2 L/分)から投与を開始し、数時間は十分な観察を行う。

(2) 酸素中毒

1気圧の下では吸入酸素濃度50%以下は酸素障害の危険性はない。50%を超えると末梢性無気肺や気道上皮繊毛運動の障害などが起こる。100%酸素を24時間吸入すると、ヒトでは肺の血管透過性亢進とコンプライアンスの低下が報告されている。

しかし、実際にはどの程度の高濃度酸素で何日間投与可能かは明らかではない。その為、低酸素血症改善のため、やむを得ず高濃度酸素を吸入させる場合、できるだけ短期間に留め、その間、急性増悪となった原因に対する治療に専念する。PaO₂の改善とともに吸入酸素濃度を徐々に減らす。

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10. 基本手技
酸素投与方法は低流量式と高流量式、およびリザーバーシステムに分類される(表3)。
表3 酸素投与方法
T. 低流量システム
1) 鼻カニューラ
2) 簡易酸素マスク
3) オキシアーム
4) 経皮的気管内カテーテル
U. 高流量システム
1) ベンチュリーマスク
2) ネブライザー機能付酸素吸入装置(本書では単にネブライザーと表記)
V. リザーバーシステム
1) リザーバー付きマスク
2) リザーバー付き鼻カニューラ、ペンダント型リザーバー付き鼻カニューラ
* リザーバーシステムを低流量システムに含む分類もある。

 

1) 低流量システム
 

鼻カニューラあるいは簡易酸素マスクが使われる。両者とも吸入酸素濃度の設定ができず、同じ酸素流量でも患者の呼吸パターンにより吸入酸素濃度が変化する。酸素流量と酸素濃度の関係の目安を表に示すが、参考程度にすべきである。

  COPD患者の急性増悪時には、吸入酸素濃度を設定できる高流量システムのベンチュリーマスクを使用した方がよい。
2) 高流量システム
  ベンチュリ効果を利用した酸素投与システム。設定濃度の酸素ガスを患者が必要とする流量以上に十分与えることができるのが特徴である。ここで高流量システムの高流量とは酸素流量の大小を意味しない。マスクから供給されるトータルの酸素流量が患者の必要としている流量より多いことを意味する。
  ベンチュリーマスクを用い、酸素濃度24%から50%までの酸素ガスを吸入させることができる。
  このマスクを使用するにあたって留意すべき点は、設定酸素濃度ごとに必要最小限の酸素流量が決まっていることである(この流量は色分けされた「ダイリューター(希釈器)」に記載されている)。
  ベンチュリ効果を利用したマスクでは、設定した酸素濃度に応じて混入する空気の流量が決まってくるため、酸素流量とマスクから流れてくる酸素と空気の混合ガスの流量(トータル流量)との関係は図1に示される。
重要な点は、トータル流量が30 L/分以上になるように設定酸素濃度と酸素流量を決めなければならないことである。何故、患者が必要とするトータル流量は最低でも30 L/分なのか。健常成人は1回に約500mlの空気を約1秒で吸入している。このときの平均吸気速度は30 L/分(=500ml/秒×60秒)である。つまりトータル流量が30 L/分以下であれば、患者はマスク周囲から不足分の空気を吸入するため、吸入酸素濃度は設定値以下になってしまう。COPD患者の場合、1回吸気量は300〜400mlのことが多いので、トータル流量は30 L/分以下でも良いのではないかと考える方がいるかもしれない。しかし、患者がため息をついたり、深呼吸をすると、平均吸気速度は30 L/分以上になる。そのため、安全を見越して30 L/分が必要最小限のトータル流量である。通常の酸素流量計の最大値は15 L/分であるので、トータル流量が30 L/分になる酸素濃度は60%にすぎない。
このように考えると、ネブライザー付酸素供給装置では吸入酸素濃度設定ダイヤルが60%以上の目盛りが付いているが、これは1回換気量が少ない乳幼児に対してのもので、成人患者には意味がない。繰り返すが、成人患者で投与できる酸素濃度は60%までである。酸素濃度60%以上を吸入させたい場合は、次項で説明するリザーバー付酸素マスクや酸素テントを使用すべきである。
3) リザーバーシステム
低流量システムに含める分類もある。呼気中にリザーバーバッグに酸素を溜め、吸気に通常流れる酸素とともにリザーバーバッグ内に溜まった酸素を吸入させる方法。

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11. 酸素療法の実際(個別製品説明のため省略)
12. 使用上の注意(個別製品説明のため省略)

 

13. 合併症
1) 呼吸中枢の抑制
  長期間の低換気状態により高炭酸ガス血症がある患者は、呼吸中枢が炭酸ガスではなく、低酸素による刺激で維持されている。このような患者に対して高濃度の酸素が投与されると、低酸素による換気刺激が除かれて換気抑制が起こり、血中の炭酸ガス濃度が上昇し、意識障害などの精神神経症状が出現する。従って慢性の高炭酸ガス血症がある患者に酸素を投与する際は、十分注意する必要がある。
  CO₂ナルコーシスの発生が予測される患者に酸素を投与する場合、不用意に高濃度の酸素を投与せずに低濃度酸素から投与を開始し、臨床症状や動脈血ガス分析の結果を見ながら、必要に応じて酸素濃度を上げていく。その際、患者の呼吸状態で吸入酸素濃度が変化するオキシジェンカニューラ(経鼻カニューラ)やオキシジェンマスクよりも、一定濃度の酸素を投与できるベンチュリーマスクが有用である。
2) 酸素中毒
  高濃度の酸素を長時間吸入させると、気管支粘膜および肺胞上皮に傷害が生じる。胸骨下の不快感、悪心、咳、呼吸困難などを訴え、肺機能障害や胸部X線で両側の広範囲な肺水腫様の変化が見られる事がある。
  予防として動脈血ガス分析を行いながら、必要最低限の酸素投与を行い、吸入酸素濃度はできるだけ50%以下※に設定するようにする。
  ヒトにおける安全な酸素分圧と投与時間は、未だ確立されていない。酸素中毒を生じさせないためには、100%酸素吸入は6時間以内、70%では24時間以内、それ以上の長期投与は45%以下とされている。
  ※60%以下と記載している成書もある。
3) 未熟児網膜症
未熟児に高濃度の酸素を長時間投与すると、網膜の血管組織が増殖するため、網膜症を起こし、失明することがある。
未熟児網膜症に対する根本的な治療法がないため、以下のような予防処置が重要である。
a) 適応例以外に酸素吸入を行わない。
b) 40%以上の酸素を吸入させない。
c) 呼吸不全のある患児ではチアノーゼが取れるまで酸素を吸入させ、PaO₂を60〜80 Torrに維持し、100 Torrにしない。
d) 酸素吸入が必要な症例では、動脈血酸素分圧(PaO₂)および経皮的酸素濃度(SpO₂)測定を行う。
e) 定期的に眼底検査を行う。
4) 無気肺
高濃度酸素を吸入すると窒素が肺内より洗い出される。窒素より酸素が血中に拡散しやすいことから、無気肺を起こすと言われている。
また、高濃度酸素吸入により、肺胞の界面活性物質の生成や分泌が障害される事も無気肺出現の原因となりうる。

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14. 参考図書
1. 日本呼吸器学会肺生理専門委員会・日本呼吸管理学会 酸素療法ガイドライン作成委員会編
「酸素療法ガイドライン」メディカル・レビュー社
2. 宮本顕二著「楽しく学ぶ肺の検査と酸素療法」メジカルビュー社
3. 毛利昌史、工藤翔二、久田哲哉著「肺機能テキスト」文光堂
4. West著、笛木隆三、富岡眞一訳「呼吸の生理」医学書院
5. 諏訪邦夫著「呼吸不全の臨床と生理」中外医学社

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